インタビュー 挾間比左徳 先生 (日本誇張法協会顧問・医師)

「私と誇張法の出会い」

――そもそも、誇張法に出会われたきっかけは何だったのですか。

偶然です(笑)。フルフォードという人が『いのちの輝き』という本を書いていますよね。あの本で初めてオステオパシーというものがあるということを知りました。この本に書かれていることは、日本人が言う「気」とか、あるいは「フォース」とかと同じように感じました。単に骨をボキボキやるだけじゃないんだということがわかりました。それなら危なくなさそうだと。それでオステオパシーを勉強してみたいと思って、調べたら菅先生のところに行き当たったんです。

――オステオパシーの中でも、誇張法の他にもいろいろ種類があるのに、いきなり誇張法に出会ったのですね。

本当に偶然です。

――勉強を始めてみて、どんな感想を持たれましたか。

わからなかったですね(笑)。菅先生には怒られるかもしれないけど、わからないけどいろいろやってみると、症状が軽くなる人が多いんですよね。結果が出ます。でも、今でも手の感覚はよくわかりません。皆がよく「緩みました」なんて言ってるけど、「本当かなあ……」なんて思ったりして。

――それでも今までずっと継続して勉強してこられたのは、やはり結果が出るからですか。

結果が出ると思い出したのは、私と同じ病院に勤務する看護師さんなんかにやってみると、その人は腰椎の四番五番が完全につぶれたようになっていて、整形外科の人が「これはもう仕方ない」なんて言っていたのを、誇張法を試すと翌日まで腰の調子がいいらしいんです。これは僕自身の方の調子もいいときに、よくそうなるんですが。

――最初に挾間先生にお会いしたときに、お医者さんですと紹介されて、「お医者さんも誇張法を勉強してるんだ」とちょっとびっくりしたことを覚えています。西洋医学と誇張法って、分野が近いようで、実はとても遠い気がしたのでそう思いました。

でも、けっこういるんですよね。医者で気功の大家みたいになっている人とか。ツボを触って、すぐに痛みをとるなんてことをしている医者もいます。

――挾間先生も、誇張法の他にいろいろ勉強されたんですか。

気功はけっこう勉強しましたが、それを治療に活かすっていうことはしてませんね。それに比べて、誇張法は効きますよね。

――西洋医学と誇張法では、ずいぶん考え方が違うところがあると思うのですが、ご自分の中で葛藤などはあるんですか。

ないですね。もともと西洋医学一辺倒ではありませんでしたから。それは小さいときからそうです。父が開業医でした。それで自分も医者にならなければいけないのかということ思って。動機としては不純ですね。父は整形でした。だから私も最初は整形で、今は内科です。整形と言えば腰痛とか肩こりですが、ああいうのは西洋医学はまったく効かないんです。やりようがないです。骨が折れていたら接ぐとか、神経が圧迫されているのをどうにかするとか、そういうのは出来ます。とにかく手術が出来なければ、後はもう何もやることが無い。

――そういう西洋医学に苦手なものがあるというのは、どこに原因があると思われますか。

見えるものしか信じないですからね。そういう考え方で発展してきたものですから、ある意味当然です。

――先生は目に見えないものにずっと興味があったんですか。

そうです。あったけど、よくわからない。民間とか、あとはお坊さんとかで、不思議な力で病気を治す人がいるという話は小さい頃からよく聞いていました。うちの母がそういうのが好きでしたから。

――先生の中で、誇張法と西洋医学は完全に二つに分かれているのですか。

西洋医学をする上で、誇張法の考え方を取り入れると、全然出来なくなります。二つを別々に勉強して、個別の事例で、ここからここまではこの考え方でやった方が問題が少ない、というふうにしています。

――西洋医学をしっかり学んで、その上誇張法も勉強している方はとても少ないと思うのでお聞きするのですが、例えば専門的な解剖学の知識とかイメージなどを持っておられますよね。

そうでもないですよ。実際に学生の時に解剖実習が終わってから、人の解剖を見る機会なんてそんなにありませんし、後は画像なんかで見るだけだから。だから医者よりも、例えば整体師の人みたいに身近にいつも骨格模型を置いていうる人の方が、人の身体のイメージしやすいんじゃないかな。

――生理学とか、解剖学以外の医学の知識が、何か誇張法にプラスに働くことはありますか。

正直、あんまり直接は結びつかないです。

――挾間先生からみて、もちろんお医者さんのレベルじゃないけど、一般の人が誇張法をやる上で、勉強すると役立つ医学の分野ってありますか。

最低限の解剖学は必要ですよね。

――誇張法を勉強する上で、一番大事だと思われるのは何ですか。

やっぱり感覚じゃないですかね。それをどこまで極められるかだけなんだと思います。あんまり感覚が無い私が言うのもどうかと思いますが(笑)。

――感覚のある無しって、何の違いなんでしょうか。

まず、先天的な違いだと思います。後、間違いなく女性の方が感覚が鋭いですよね。いろいろな講習会に行きましたけど、女の人ってまずぱっと大事なことの全体をつかむんです。男はあれこれ理屈を言うから上達が遅いんです。でも女の人は最初から感覚で来るから。そういうのを見てると、感覚って先天的な要素が大きいと思います。

――男性の中でも、極めている人はいますよね。

それは女の人よりもっと苦労して、いっぱい訓練して、そこまで行ったんじゃないですか。

――以前定例会などで、先生はハワイの「ホ・オポノポノ」などを紹介してくださいました。誇張法があるレベルまで行くと、意識の使い方が重要になったり、精神世界というか、心や魂などのことをある程度知っておいたほうがいいのではないかと思うのですが。

いいというより、結局そっちしかないのかなあと思います。それを極めれば、最終的には「○○療法」とか、全部いらなくなるんじゃないかな。あんまりこういうことを言っちゃいけないか(笑)。

――何かお薦めのものはありますか。

私が誇張法協会で一番最初に話した、自律訓練法なんかいいと思いますよ。一見科学的な方法みたいですが、あれも元はヨガ行者とか、座禅のお坊さんがどんな肉体状態にあるのかをモニターして生まれてきたものです。手足やお腹が温かくなったり、重く感じられたり、額が涼しくなったりした状態になった時に、瞑想が深まっているということがわかって、それを逆に肉体の状態から精神状態に持って行こうというやり方です。これも、頭がからっぽの状態だと、うまくそういう感覚に入って行けるんだけれども、いろいろ考えちゃうとそうならないんです。だから、何にも考えないようにする訓練としても有効です。

――他にも、ゆる体操なんかも紹介されていましたよね。

やはり、力を抜くことはとても大切です。一番難しいのは、力を抜くというときに、その人その人の身体の柔らかさって、みんな違うと思うんですよね。だから菅先生とか、誇張法の上手い人の施術をしている人の姿勢をただ単純に真似したりすると、あんまり良くないですよね。だって、身体の柔らかさが自分とは違うんだから。だから、おそらく人それぞれ違った形にしなきゃいけないんじゃないかと思います。やっぱり最初に誇張法を勉強し始めた頃と、今とで一番違うと感じるのは、この力を入れないということです。力は入れないで、ただ思うだけ、そんなふうに心がけています。

――今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

ありがとうございました。

2012/5/28 (聞き手 桑原有毅)